ドッグファイトシート コブラ機動に有効性はあるのか?

ドッグファイトシート

ドッグファイトシートを使って、コブラ機動の急減速による接近を再現

コブラ機動(プガチョフコブラ)は、出現当時から、「対抗機は、オーバーシュートしてしまう。」「いや、単なるデモンストレーション用の機動であり、実戦では役に立たない。」との両方の意見がありました。
そこで、ドッグファイトシートを使って、定量的な再現を試みます。

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プガチョフコブラ
プガチョフコブラ(コブラ機動)についての資料を何点か、

『「次の機動は”プーガチョフ・コブラ”で、高度10,000ft(3,030m)、速度220kt(407km/h)から始まった。85%のパワー・セッティングのままで急激に操縦桿を引き、姿勢を90°近くにした。最大姿勢角を採った後の指示速度は83kt(154km)であった。」』

出典:エアワールド1998年12月号「実戦から学ぶ空中戦闘法⑫」

『浜田 エビエーション・ウィーク誌は400~450km/h(ノットに換算すると216~243kt)でコブラを始め、3秒くらいで110km/h(59kt)程度まで速度が下がるとしていますね。かかるGは3.5~4にすぎないそうで。
藤田 ソ連国防省の機関紙「赤星」の記事では、開始速度には触れていませんが、1秒半後に150km/h(81kt)になるとしていますね。』


出典:「ソ連の新世代戦闘機 Su-27&MiG29」酣燈社(敬称略、機体姿勢図を含む)

当然、毎回同じコブラになることは無いので、色々な数値があります。
開始速度は、220kt、230kt、コブラ後の速度は、83kt、59kt、81kt、実施時間は、3秒、1秒半、6秒、減速速度と減速時間の両方があるエビエーション・ウィークから加速度を計算すると平均3G。

コブラ機動の設定
これらから、ドッグファイトシートで再現する開始速度、コブラ後の速度、コブラ実施時間を決めます。
開始速度は200kt程度(M0.3なのでエネルギー機動からは、よろしくない状態)。コブラ後の速度は、デモンストレーションではなく実戦ならば100kt程度が妥当と(素人)判断。コブラ実施の時間は、3秒の前後を含めてトータル時間5秒とします。

と、ドッグファイトシートのスケールに強引に結び付けたので、
「2速度ポイント(200kt)が、1ターン(5秒)後に、1速度ポイント(100kt)に減速」
をドッグファイトシートで再現します。

「ドッグファイトシート」について
 ヘックス(六角形)シートを使用して、定量的に飛行をプロットするツール
 1ヘックス:250m 1ターン:5秒 速度ポイント:50m/s=100kt(ノット)
 1Gの1ターン後の速度変化量:1速度ポイント
 1G旋回でのターン終了時のヘックス移動量:1ヘックス
 詳細およびヘックスシート.pdfのダウンロードは、本ブログ「ドッグファイトシートによる機動のシミュレート」参照

「ドッグファイトシート」によるコブラ機動の再現

図1.ドッグファイトシート「コブラによるオーバーシュート」

コブラ機の後方には、GUN射撃でレッドスターを赤い流れ星にしようとする対抗機が、ミニマムレンジ(1ヘックス250mと設定)に入らないよう500mの位置で、同速度で追尾。

コブラ機は、形勢の逆転を狙い”コブラ”機動、コブラにより速度は200ktから100ktへ減速。コブラ機と対抗機との速度差は100ktになり、コブラ機は100kt≒50m/sの接近率で、後方の対抗機へ”向かい”ます。
500m接近し横並びになるまでには10秒間を要し、対抗機がコブラ機をオーバーシュート、コブラ機が対抗機へGUN射撃可能な位置につくのは、コブラを開始してから20秒後。

うん?、一瞬で後ろにビュワーんのイメージではない。

補足)コブラ減速による接近率の体験実験
速度100ktは180km/時、180km/時で接近するものとして、
「「のぞみ」を始めとする通過列車の速度は200 km/h(かつては185 km/h)に制限されている。この速度は、東海道新幹線の駅通過速度としては最も遅い。」

               出典:Wikipedia「熱海駅」


熱海駅のホームの端に立ち、反対側のホームから進入し通過する新幹線を見ると、それはコブラによる接近に近い(のでは?)。
なお、東北新幹線の通過速度は320k/時(≒200kt)なので、対抗機が100kt優速でコブラ機を追尾、コブラ機はカウンターチックでコブラ減速をする状況になります。

所感
距離がほぼ無い状態でコブラをすれば、真横を通り過ぎる新幹線にように、一瞬でビュワーんとなります。
が、その前段階で対抗機は射撃が成功しなくミニマムレンジに入りそうになるなら、離脱を想定しているでしょう。
そもそも、ジェット機のドッグファイトで、対抗する2機が、反航ではなく同航でミニマムレンジ以内に接近する状況が発生するものなのでしょうか?(コブラを意図してミニマムレンジ同航になるよう仕掛ける?)
と、コブラが成功するには、する前のお膳立てと、した後の思惑通りの対抗機の動きが必要です。


当ブログでは、コブラ機動を成功させるのは、操縦者の腕ではなく、脚本家の腕との結論です。

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