長距離メガ粒子砲戦におけるビーム攪乱幕の非対称化戦術
私とパブリクとビーム攪乱幕
「機動戦士ガンダム」第35話「ソロモン攻略戦」で登場の、いかにも「宇宙兵器」然としたパブリク突撃艇。
艇体以上のボリュームとなる2基のミサイル(コンテナ弾)を抱えるバランスは、無重量空間での運用を前提としており、スマートではないコックピット周りも含めて、個人的なランクで上位に位置するデザインです。
今回は、この「パブリク突撃艇」と「ビーム攪乱幕」の二次創作設定です。
両者はソロモン要塞砲と連邦軍艦隊艦砲との長距離ビーム砲撃戦に、どのような影響を与えたのか?
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過冷却状態のミノフスキー粒子
ミノフスキー粒子は通常の空間で、正負の荷電による電気力(引力)とT(タウ)フォース(斥力)により、正負粒子が規則的に並んだ立方格子場-Iフィールドを形成する。このIフィールドは、ミノフスキー粒子の密度、エネルギー準位、外部からの電磁的な圧縮で、より強固な場となっていく。
しかし、本来ならば結合し立方格子となって「安定」するミノフスキー粒子が、互いにつながりを保ち、特定の位置や速度を持たずランダムな状態で存在・運動しゆらぐ、「準安定」な高エネルギー状態が存在する。
この状態は、分子が結合し固体化する温度であるが分子が自由に移動する液体の状態を保ち続ける過冷却のイメージに近いと言える。
連邦軍はエネルギーCAPの開発過程で、ミノフスキー粒子のこの状態を生成、維持する技術的手段を取得した。
非格子化ミノフスキー粒子を通過するメガ粒子ビームに発生する現象
立方格子化してない高エネルギー準位のミノフスキー粒子が散布されたエリアをメガ粒子が通過すると、経路上のミノフスキー粒子は刺激を受け「準安定」が崩れ立方格子を形成する。安定の谷間へ転げ落ちる時にエネルギーを放出、それがメガ粒子と相互作用を引き起こしメガ粒子の軌道は形成した立方格子の方向へ沿うよう曲げられる。
ビーム収束の拡散
メガ粒子群を収束、同一方向へ加速したビームが非格子化ミフスキー粒子分布へ進入、通過する時の現象をメガ粒子単位で見る。
個々のメガ粒子は通過する経路に形成された立方格子と相互作用をするが、立方格子の方向は粒子状態の時に内包されており、その方向は粒子、粒子群ごとにランダムなためビームを構成するメガ粒子は同一方向へ偏向しない。
同一方向へ加速された収束メガ粒子群が同一方向へ偏向しないことは、通過後のメガ粒子ビームの収束径が時間と共に増大していくことであり、これはエネルギー密度の低下となる。

ビーム軸の偏向
次にビーム単位で現象を見る。
非格子化ミノフスキー粒子の分布は均一性、等方性を持たない。エネルギー密度の粗密、立方格子の方向は、様々なスケールの分布で常にダイナミックに変動している。
個々の立方格子の方向はランダムと言えるが、一歩引いて見ると分布には滞留が存在し、その中の方向は偏ったものになる。
この分布を通過したビームは、収束を拡散しつつ、ビーム軸(ビームパス)はその分布の持つ偏った方向へ偏向させられる。
そして、一歩横を見ると異なるエネルギー密度、異なる格子方向の偏りの分布が混融している。
非格子化ミノフスキー粒子の分布エリアを通過する複数のメガ粒子ビームは、それぞれ異なる方向へ偏向する。

ビーム攪乱幕の原理
非格子化ミノフスキー粒子の分布を通過した直後のメガ粒子ビームの拡散、偏向の量はごく僅かなものである。しかし、目標への長距離空間を通過する間に拡散、偏向は拡大していくため、ビーム密度の低下、ビーム軸と照準線との乖離は、メガ粒子砲の効力の減少となって現れる。
連邦軍はこの非格子化ミノフスキー粒子分布を「ビーム攪乱器材」※1として、対要塞戦の長距離砲撃戦において自軍を有利にする支援兵器にすることを決定した。
※1.機体から数100メートルのエリアに高強度の制御された立方格子場(Iフィールド)を形成し、この数100mの通過でメガ粒子ビームを拡散、偏向させ機体へのダメージを軽減させるIフィールドバリアーは、同じミノフスキー粒子工学の産物であるが原理的に異なるものである。
ビーム攪乱幕の長距離メガ粒子砲戦における戦術使用
ビーム攪乱幕による現象はジオン軍、連邦軍、双方のメガ粒子ビームを平等に拡散、偏向さ
ビーム攪乱幕を自軍の兵器として戦術的に有意性を持たせるにはどうすれば良いのか?
それは「ビーム攪乱幕から目標までの距離を非対称にする」、つまり「相手の目の前にビーム攪乱の幕を下す」ことである。
ソロモンのメガ粒子砲から発射されたメガ粒子のビームは、発射直後にビーム攪乱幕を通過、ビーム収束の拡散、ビーム軸の偏向が始まり、これを拡大しながら連邦軍艦隊へ向かう。
これに対し連邦軍艦隊のメガ粒子ビームは、ビーム攪乱幕の無い空間を進みソロモン到達の直前でビーム攪乱幕を通過する。ビーム収束拡散、ビーム軸偏向は同じように生じるが、その直後にソロモンへ着弾する。
ソロモンのメガ粒子ビームは効力、命中率を低減させられ、連邦軍のメガ粒子ビームの低減はわずかなものになる。

相対速度0
ビーム攪乱幕は何らかの手段でソロモンの至近へ敷設されなければならない。さらにビーム攪乱幕はミサイル、砲弾とは異なる運用を要求された。ビーム攪乱幕と目標とが相対速度を持っていると目標の至近へ敷設されたビーム攪乱幕は一過性のものとなってしまう、戦闘が継続する間、ビーム攪乱幕の効力を維持するためには、目標とビーム攪乱幕との相対速度を0にしなければならない。
ソロモン勢力圏の中を進み、ソロモンの玄関に到達したら、ゆったり漂うビーム攪乱幕を置かせてもらう。
ミノフスキー粒子の女神を振り向かせるのは容易ではなかった。
「ガンバスター」パブリク突撃艇
連邦軍は要塞に配置された長距離ビーム砲に危機感を持っていた。要塞の地勢を利用した長大な基線長のセンシング、観測機器は、艦艇に装備されたFCSをはるかに凌駕する精度を持っている。要塞砲と艦砲が長距離砲撃戦をした場合、艦艇には機動性の優位があるものの、そのシミュレーション結果は想定を裏付けるものになる。
この要塞砲の無効化の任務は突撃艇隊が担っていた。
パブリク突撃艇は、艦隊内、拠点間の人員、物資の移送から艦隊進路の啓開、長距離哨戒をするマルチロール的な運用をしていた。しかし、本来の任務は、高相対速度を維持し目標へ接近、艇体下部に搭載された各種のコンテナ弾を投射するものでる。
ソロモン戦においても、ビーム砲塔を目標とし、砲塔を直撃、または周囲の岩盤ごと粉砕する硬目標貫通弾を搭載、高相対速度でソロモン防御エリアを突進する攻撃プロファイルを策定、準備を進めていた。
パブリク突撃艇の「高速パス投射」プロファイル

しかし、連邦軍艦隊参謀本部が突撃艇隊に渡したものは、ビーム攪乱弾であった。
ビーム攪乱弾
メガ粒子ビーム攪乱の研究は順調であった、しかし、兵装としてのビーム攪乱弾※2の開発はそうではなかった。不安定なバランスに立脚する原理を発生させ、保管、輸送、搭載、投射、形成、戦闘間の維持をさせる目途がたったのはジャブローに狼煙が上がる直前だった。
コンテナの仕様も、荷物の仕様が二転三転するため混乱、製造開始の決定も見切り発車だった。
開発初期段階での投射点距離は(当然ながら)スタンドオフ距離、投射時の相対速度も(当然ながら)高いものであったが、荷物は際限なく増大し、投射点距離、投射速度は削り取られていった。
ジャブロー工廠へリリースされた設計は、簡素なセンサー、ミノフスキー粒子を詰め込んで膨らんだタンクと維持装置、補器、そして位置、速度を最終調整する申し訳程度のスラスターを繋ぎ合わせたものだった。
モックアップを見た突撃艇クルーは「試験管とマッチ」と評した。
※2.非格子化ミノフスキー粒子を保存、状態を維持、自律誘導、推進機能を有するコンテナ
近接速度0投射
突撃艇隊へ指示されたビーム攪乱弾の投射点位置、投射速度を基に突撃艇隊本部は攻撃プロファイルの策定を行った。
投射点位置、投射速度は変えようがない、しかし、そこに至るそこから去る過程は突撃艇隊の裁量に任されている。
方針は「ソロモン防御エリアのいかなる位置、時間においても生存性を高める手段を施す」だった。
ソロモンへのファーストストライクは要塞の全ての防御火網と迎撃隊が指向させられる。
生き残るためには可能なあるゆるものを使う。
推進剤の使用は投射の瞬間を起点とし、相対速度0への減速、相対速度0からの加速も含めて常に回避となる機動をし続ける。
艦隊との相互補完を提示し参謀本部は可能な限り受け入れた。
パブリク突撃艇の改修も要求した。
「パブリクの損失はソロモン戦に齟齬をきたす」
パブリク突撃艇の「近接速度0投射」プロファイル

ソロモン防御エリアにおけるパブリク突撃艇小隊の防護措置

パブリク突撃艇は4機の小隊(フライト)を行動単位としソロモンのビーム砲塔1基を指定される。
ソロモン防御エリアへの突入から防御エリアからの離脱までに行う突撃艇小隊の行動要領は、投射以外、すべてが生存するための手段であった。
フェイズ-1.防御エリアへの進入
従来の高相対速度より低い相対速度にし推進剤をフェイズ2,3,4での回避機動へ振り分ける。
目標の防御エリアへ入る前に4機の内1機のビーム攪乱弾を使用して編隊の前方に自己防衛用のビーム攪乱幕を形成、小隊は密集編隊で攪乱幕の有効範囲に収まり「盾」と共に防御エリアへ進入。
投射した突撃艇は小隊の援護機となり周囲を警戒。
作戦へ投入されるビーム攪乱弾の25%を使用しソロモンの長距離ビーム砲火の中を突撃艇は進攻する。
フェイズ-2.回避機動による接近
自己防衛用ビーム攪乱幕が無効化されるとパブリク突撃艇の防御手段は機動のみになる。
相対速度0に持っていく減速もタイミング、Gを変動させ、突撃艇隊へ指向される射線と邂逅しないよう回避機動を継続する。
フェイス-3.投射
回避機動を途切れることなく続け、指定されたビーム砲塔との距離、相対速度が規定に納まった瞬間、ビーム攪乱弾を投射。
突撃艇からのリリースアシストを受けビーム攪乱弾はビーム砲塔へ向かう。
ビーム攪乱幕が目標のビーム砲塔へ最適となる位置、限りなく0に近い相対速度で被さるようスラスターを噴射。
そして、非格子化ミノフスキー粒子の幕を展開。
フェイズ-4.回避機動による離脱
投射後、攪乱弾は艇体後部のガンカメラでモニターし、突撃艇隊は帰投フェイズへ移行。
回避機動をし帰投エリアへ向け加速、ソロモンとの距離、相対速度を増大させる。
フェイズ-5.帰投
ソロモンへ進攻するMS隊と調整したルートで突撃艇隊は帰投。
MS隊からの直接の援護を受けることはできないが、MS隊は周囲を警戒しジオン軍のMS部隊、戦闘艇隊の接近を阻止する。
ソロモンへ向かうMS隊の隊列はソロモンから戻る突撃艇隊の帰投回廊を形づくる。
ビーム攪乱弾の投射は突撃艇隊の任務であるが、ソロモン至近へのビーム攪乱幕の敷設はチェンバロ作戦における第三艦隊の任務であった。
宇宙世紀0079年12月24日 18時10分
連邦軍の宇宙艦隊は再びジオン宇宙軍との戦闘を開始する。

サイド4の残骸を脱し発進線へ向かうパブリク突撃艇の小隊群、この後、一斉回頭をし突撃横隊を組む。
ソロモンはグレー色で浮かび上がり、艦艇ゲート、砲塔はカモフラージュされこの画像では確認できない。
第二連合艦隊本隊はソロモン左後方に位置し、第二連合艦隊本隊-ソロモン-太陽は一直線に並ぶ。
ティアンム艦隊は太陽光を正面から受ける。
生還
「俺たちの小隊は、情報士官が指定したソロモンの住所へ荷物をきっちり配達した」
配達後、ガトルがやって来た。スープのようなミノフスキー粒子、自分達が配った荷物の影響もあったかもしれない。小隊は奇襲を許してしまった。
艇長は操縦の覚束ないパブリクを戦闘域から脱出させた。それが7日前、艇体は半壊したが改修工事で強化したダメージコントロール機能、ライフスペースへ分厚く吹き付けた耐弾コーティングは役目を果たした。
かろうじて作動するスラスターを使ってなんとかソロモンとの相対速度を無くすことまでは出来た。
そう、再びソロモンとの速度0、しかし、今度はずいぶんと遠くになってしまった。
センサー、通信機能は沈黙、唯一ブラックボックスに組み込まれている短距離通信のみが可能。
そのため、ソロモン戦がどうなったかは分からない。連邦とジオンも話のネタに存在するものになった。
7日間を過ぎるとあまり良い評判を聞かない極低代謝導入剤を使用しなければならない。
「さて、どうしたものか」サバイバル訓練で教えられたフラットメンタルで思案している時、短距離通信が開いた。
「貴艇の所属は何か」「またせたな、英雄さん」
パブリク突撃艇の帰還率は高いものではなかった。しかし、乗組員の生還率はそれと同じではなかった。
所感
パブリク突撃艇は〇〇兵器だ、との空気がネットにはありますが、物量で部隊を押し出し、物量で部隊の防護も行う連邦軍の戦闘任務として、ビーム攪乱弾投射のプロファイルを立案しました。
しかし、ビーム攪乱幕の二次設定をこねくり回すうちに、パブリクの任務は劇中よりも過酷なものになってしまったような・・・
今回の攻撃プロファイルはパブリク突撃艇です。フォーマットはリターン形式。
パブリクがサイト「FMA考察設定-G」の5本目になります。あーだ、こーだと「実はこうだった」を勝手にイメージし、エクセルで計算、加工をし、ストーリをつくるのは楽しいものです。仕事、家族とは別の「私の世界」の中で何かを「完成」させるのは、砂漠で水筒の水を一口飲むことになります。
