宇宙空間におけるモビルスーツの機動性能

FMA考察設定-G

熱核ロケットで推進するモビルスーツの機動性に関する個人考察

アニメ「機動戦士ガンダム」では、地球-月軌道圏をモビルスーツが疾駆しています。
この宇宙空間におけるモビルスーツの機動性能を、噴射速度、質量比、加速度、攻撃プロファイルから考察します。

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宇宙空間における最大速度を決めるもの
宇宙空間は真空なので速度を上げても地球上のように速度の二乗に比例する抗力(抵抗)は発生しません。地球上では抗力と推進力が釣り合う速度が最大速度になります。
抗力が無い宇宙では、何が最大速度を決めるのか?

ロケット工学に「ツィオルコフスキーの公式」があります。
ミノフスキーの世界でツィオルコフスキーを適用します。

v=w・ln(m0/mt)
v:t秒後の到達速度
w:推進材の噴射速度
m0:初期質量
mt:噴射t秒後の質量
m0/mt:質量比
ln:自然対数

この式が示すよう、噴射t秒後の到達速度vは、噴射速度wと質量比(m0/mt)の二つで決まりす。
直線で加速し、すべての推進剤を噴出し終わった時の速度がその機体性能の最大速度になります。
※本ブログでは、この速度を「航空宇宙軍」に倣い「最終速度」と記します。

質量比
この中でヤヤコシイのが、”ln”自然対数。
計算はエクセルに任せて、具体的な数値例は以下になります。
 初期質量の20%を噴射 質量比=1/0.8=1.25 ln(1.25)=0.22 最終速度は噴射速度の0.22倍
 初期質量の50%を噴射 質量比=1/0.5=2   ln(2)=0.69  最終速度は噴射速度の0.69倍
ステルスから機内に8,200kgの燃料を搭載するF-22は最大離陸重量38,000kgなので、これを質量比に当てはめると、
 F-22質量比=38,000/(38,000-8,200)=1.27 ln(1.27)=0.24

ここで、
初期質量の63.212…%を噴射、質量比=2.718… ln(2.718)=1 最終速度は噴射速度の1倍
になります。
質量比2.718…(自然対数の底e)以上では、最終速度は噴射速度以上になります。
 
噴射速度
次は噴射速度です。ガンダムの世界での推進は熱核ロケット、核融合炉で発生した熱で推進剤を高温高圧にし噴射させます。この噴射速度は?

実在、理論上の各種ロケットの噴射速度
 化学燃料ロケット:約3km/秒~4.5km/秒
  →液体酸素と液体水素、ケロシンを燃焼。V2ロケットはジャガイモから精製したアルコール。
 熱核ロケット(分裂):約7.5km/秒~9km/秒
  →熱核分裂炉の熱で液体水素を加熱・膨張させ、ノズルから噴射。
   NASAが計画をしている。
ここまでは、実存、現在のテクノロジーで実現が可能なもの。
次からは、未来のテクノロジー、未来のスーパーテクノロジーです。

 熱核ロケット(融合):約10km/秒~50km/秒
  →熱核融合炉の熱で液体水素を加熱・膨張させ、ノズルから噴射。
 熱核融合ロケット:約100km/秒~1,000+km/秒
  →核融合炉で生成されたプラズマを磁気ノズルで加速し噴射。
想定される噴射速度は、大きな幅を持ちます。

噴射速度と質量比から求まる最終速度
横軸に噴射速度、縦軸に最終速度、推進剤搭載比率=質量比をパラメータにするグラフを示します。

図1.噴射速度と最終速度および推進剤搭載比率(質量比)との関係/「モビルスーツの最終速度」設定

化学燃料ロケットは、第一宇宙速度(地上発射なので、さらに上乗せが必要)が可能となる質量比を多段式で達成しています。
ガンダム世界での推進力である熱核ロケット(融合)の噴射速度は、熱核ロケット(分裂)よりは高性能、プラズマ熱核融合ロケットよりは低性能をグラフに置いたものです。
モビルスーツの推進剤搭載比率は、絵を見ると20%くらいが限度?、実は〇〇が〇〇で50%が可能! として、20%から50%の間とします。
この噴出速度と質量比から設定するモビルスーツの最終速度は、7km/秒~11km/秒

最終速度を加速度運動で見る加速継続時間
最終速度を加速度運動で見ていきます。この速度に達するには何Gで何秒掛かるのか?
別の言い方にするなら、この最終速度に到達できるエンジン、推進剤を搭載する機体は、何Gの加速度運動を何秒継続できるか?です。これを「加速継続時間」とします。
これをグラフにします。
縦軸は図1と同じ最終速度、横軸に加速度運動を継続する時間、パラメータは加速度[G]です。

図2.最終速度と加速継続時間および加速度との関係/「モビルスーツの加速性能」設定

モビルスーツの加速性能、1Gなら10分以上継続でき、10Gなら2分以内に、すべての推進剤を使い果たします。

攻撃プロファイル
通常、対抗する彼我の部隊は隣接していなく距離を取って対峙しています。交戦するには、敵勢力圏へ進入し、交戦可能距離で戦闘、戦闘後、味方勢力圏へ帰投する一連の手順(シーケンス)が存在します。
この手順を加速度で整理すると、

シーケンス: 発進  巡行   接敵  戦闘  離脱  巡行   帰投
加速度  : 加速 加減速無し 減速  機動  加速 加減速無し 減速     

各シーケンスに、限られたリソースの推進剤(機体性能のトータルの加速継続時間)を割り振ります。
どのように?、こんな感じ・・・で。
敵艦隊への進攻巡行に10%(加速5%、減速5%)、帰投巡行に10%(加速5%、減速5%)、予備(リザーブ)に10%、残り70%の加速継続時間を戦闘に使用すると設定。

図3.「モビルスーツの攻撃プロファイル」設定

宇宙空間におけるモビルスーツの戦闘機動性能
機体性能の最終速度に到達するトータルの加速継続時間の内70%を戦闘に使用する場合、その加速継続時間がモビルスーツの戦闘機動性能になります。

図4.「宇宙空間におけるモビルスーツの戦闘機動性能」設定

想定、仮定で、このようになりました。
350m/秒~550m/秒(マッハ1~マッハ1.6)で巡行し、戦闘では、10G機動を1分継続でき、5G機動で2分、10分間戦闘を継続させるなら1Gになります。
実際の戦闘機の攻撃プロファイルは戦闘時間を5~10分にしていますから、設定したモビルスーツの機動性能より良好です。
空気の揚力を利用できる大気圏内航空機と、すべてが自前の推進剤で支払いをしなければならない航宙機との違いです。

今回の私の設定では、「モビルスーツは宇宙空間において、延々と高G機動をすることはできないが、高G機動が極度に限定され瞬発的な使用のみになることはない。」です。

所感
「ガンダム」における機動兵器「モビルスーツ」の宇宙空間における機動性能を考察、設定しました。「ガンダム」を逸脱しなく、技術的に整合する設定を指向しています。
今回の設定も、画面上のモビルスーツの機動イメージを損なうことは無いと思いますが・・・

「最大出力で噴射を続けた場合、わずか21秒で全推進剤を使い果たしてしまう」
心の正典「ガンダムセンチュリー」です。
この21秒を読んだ時は、その短さに驚愕しました。
しかし、今回の考察、設定に21秒を置くと、同じ方向性であることが分かります。
あの時代の空気として、ガンダムの設定は限りなく現在の延長に存在するものとして扱う、がありました。今も、その空気の中で生き延びています。
そして、あの時の自分に、この話をしてあげたい。

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