F-15 vs MiG-25 要求される機動性とは?

エネルギー機動ダイアグラム 戦闘機/ジェット機

制空戦闘機と高々度高速迎撃機が適応すべき環境と獲得した機動性

 「機動性能計算.xlsx」(Microsoft Excelを使用した航空機飛行性能計算モデル)は、計算結果をフライトエンベロープとエネルギー機動ダイアグラムに作図するので、F-15AとMiG-25PDの機動性能※1をエネルギー機動ダイアグラムで比較します。

※1.ミコヤン設計局からすれば、「ドッグファイト?井戸の底でグルグル周る機体を開発したわけではない。」になるのでしょう。本ブログの機動性は、ドッグファイトのみではなく広義の機動性を扱います。 

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比較条件
両機は、機内搭載燃料50%、外部搭載無し、外部抵抗クリーン状態です。
 ・F-15A機体重量:15,083kg
 ・MiG-25PD機体重量:28,053kg※2

※2.燃料半減の同一条件で、機体重量が倍近く違うことに留意。

エネルギー機動ダイアグラム
エネルギー機動ダイアグラムに、F-15AとMiG-25PDの最大(瞬間)旋回、維持旋回、動圧制限、マッハ数制限をプロットします。
エネルギー機動ダイアグラムは特定の高度での性能なので、右上に両機のフライトエンベロープを載せて、飛行領域中のダイアグラム高度を示します。

高度0m/圧倒的なF-15のドッグファイト性能
旋回率と旋回半径からドッグファイト性能を比較すると、F-15に対するMiG-25のドッグファイト性能は劣悪です。
M0.6の維持旋回は、F-15が8G、MiG-25が4Gなので、F-15はMiG-25の半分の旋回半径で、2倍の旋回率でグルグル周り込んできます。
さらにMiG-25は、最小速度(揚力不足、失速速度)と制限G(本計算モデルは4.5G、5.5Gの資料もあり)で囲まれる最大旋回※3の範囲も狭く、グイっと向きを変えることもできません。

※3.最大揚力係数(最大迎角、それ以上は失速する)での旋回、旋回率が最大となる。
ダイアグラム左側の最大揚力係数制限と右側の制限Gの間では、抗力(有害抗力+揚力の2乗に比例し増加する誘導抗力)が推力を上回り、減速または速度を維持するには降下を必要とする旋回性能。

図1.高度0mにおけるF-15AとMiG-25PDの比較(計算モデル)
F-15A:機体重量15,083kg、外部搭載無しクリーン MiG-25PD:機体重量28,053kg、外部搭載無しクリーン

高度5,000m/F-15のドッグファイト優勢は続く
高度5,000mにおいても、F-15の優勢は変わりません。
最小速度はF-15が低く、飛行領域の選択でアドバンテージを持ちます。
超音速領域のM1.2でMiG-25の維持旋回はF-15に接近しますが、F-15より低い動圧制限がMiG-25に制約を掛けます。

図2.高度5,000mにおけるF-15AとMiG-25PDの比較(計算モデル)
F-15A:機体重量15,083kg、外部搭載無しクリーン MiG-25PD:機体重量28,053kg、外部搭載無しクリーン

高度10,000m/高マッハ領域でMiG-25がF-15より優勢
注目すべきは、M1.4で維持旋回の優勢が逆転します。
高度10,000m、M1.4の飛行領域では、MiG-25はF-15と同等の旋回率、旋回半径で機動飛行が可能です。
ただし、M1以下の亜音速では、F-15の絶対優勢は変わりません。
実戦において、どの高度域、どの速度域で戦闘機動が要求されるのか?

図3.高度10,000mにおけるF-15AとMiG-25PDの比較(計算モデル)
F-15A:機体重量15,083kg、外部搭載無しクリーン MiG-25PD:機体重量28,053kg、外部搭載無しクリーン

高度15,000m/超音速領域でMiG-25の優勢が拡大
高度15,000m、M1.4以上では、MiG-25の機動性の優位は拡大していきます。
F-15は推力不足でM2.2が速度限界となり維持旋回は1Gを切りますが、MIG-25はM2.2で3G旋回を継続できます。

図4.高度15,000mにおけるF-15AとMiG-25PDの比較(計算モデル)
F-15A:機体重量15,083kg、外部搭載無しクリーン MiG-25PD:機体重量28,053kg、外部搭載無しクリーン

高度20,000m/継続飛行可能はMiG-25のみ
高度20,000mはF-15の上昇限度を超えています。※4
MiG-25は高度20,000mを飛行領域とし、最大速度M2.83(マッハ数制限による)では、バンク角48度の1.5G旋回が可能で、旋回半径50kmを旋回率1度/秒で機動します。

※4.F-15の最大(瞬間)旋回領域が存在しますが、これはズーム上昇による一過性のもので、継続性はありません。

図5.高度20,000mにおけるF-15AとMiG-25PDの比較(計算モデル)
F-15A:機体重量15,083kg、外部搭載無しクリーン MiG-25PD:機体重量28,053kg、外部搭載無しクリーン

所感
与えられたミッションを完遂するために、まったく異なる適応をし、想定戦域に特化した性能を持つ機体へ進化しました。

F-15 vs MiG-25の大枠は予想通りのものですが、高度0mでのMiG-25のドッグファイト性能の無さ加減、最大速度M2.83でのドッグファイトとは違う戦闘機動を「定量実感」※5できました。

※5.これをしたいがために「機動性能計算.xlsx」を作成しています。

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